通訳をうまく活用するための注意事項

中国にいた時の8年のうち6年間は日系の会社で働いていましたので、色々な通訳の方を見る機会がありました。日本とのビジネスの場がどんどん増えていますので、専門の通訳者だけではとても人数が足りず、だいたいの会社は実務兼任で通訳することがほとんどです。そして通訳と言っても本当にピンキリで、レベルの高い通訳の人は本当に限られています。何十人と見てきましたが、割合は5%いるかいないかの体感です。

通訳の精度が悪く誤解を招くことも多い

特に全く話せない方が誤解しやすいのですが、通訳も100%日本語が分かっているわけではありません。かなりの高レベルに話せる人でも、ネイティブではないので、かなり込み入った日本語だと分からない時があります。そして大変重要なことなのですが、中国人の性格上、分からない言葉があっても分からないと言わないことがメチャクチャ多いです。そのまま前後の意味関係から自分の解釈で勝手に通訳します。日本人からすると「なんで?確認しないの?」って思いますが、本当に中国人は確認しません。すごいのは、分かってなさそうだなと思って、「分かった?」って聞いても必ず「分かった」と言います。分かっていなくてもこう答えます。

なんでかというと、多くの中国人は知らない言葉があった場合、下手に「知らない」と言ってしまうと自分の能力を疑われると思っているからです。知ったかぶりをしていると言えば、そうなのですが、中国でのビジネスの世界では良くも悪くも「はったり」が重要で、なめられないようにすることはとてもとても重要なのです。日本人からすると理解が難しいですが、面子を重んじるという文化は日本よりも非常に強い印象があります。

こういう背景を知らず、自分の言っている日本語が全て伝わっていると思い込むと間違いが生じやすくなります。ただでさえ日本語は直訳だけでは伝わりにくい曖昧さや忖度が存在します。日本人が日本人と話すように通訳に話すことは、誤解を生みやすくする原因となります。

例えばこんなことが起こります

例を挙げます。

「明日、社長が視察にくる。長安ホテル10時出発だからお迎えよろしく。社長はせっかちな人だからちゃんと対応してね。」

と上司が通訳の人に伝えた場面を見た私は「大丈夫かな」って心配になります。なぜだと思いますか?おそらく高い確率で、10時ピッタリに到着する車の手配をしてしまうのではないでしょうか。しかも交通状況によっては10時5分に到着なんてこともあり得ます。こういう事が本当に普通に起こります。

この場合、通訳は社長がホテルを10時に出るという情報だけで動いています。「せっかち」とか「ちゃんと」という日本語を知らない通訳は結構います。なので、後半の「社長はせっかちな人だからちゃんと対応してね」という言葉は無視され、ホテル10時出発という情報だけが伝わっています。そして中国人は10時に来ればいいという認識だと、かなりアバウトになります。10時出発に絶対に間に合わさないといけないとは思いません。日本人なら、せっかちな人だったら5分前にはもうロビーに居そうだなとか、ちゃんと対応するために10分前から待機しようとか思いますが、中国人は、というか日本人以外は、10分前に待機していなさいとはっきり言われないと、そんな機転を利かすわけはありません。

通訳が理解しにくい日本語

<曖昧表現>
日本語の特徴でもありますが、曖昧表現が多すぎます。「分からないでもない」「うまくやっといて」「空気を読んで」とかほぼ伝わりません。YESなのかNOなのか分かりずらいのも、結構通訳者を苦しめています。「このレポート、悪くないんだけどなぁ」って上司が別の中国人に言ったとして、通訳は何と訳せばいいのでしょうか。結局良いの?悪いの?ってなります。

<ことわざ、慣用句>
日本人も無意識に使ってしまう表現が結構あります。「臨機応変に」「無駄足」「土壇場で」「ハードルが高い」など決して難しい表現ではありませんが、ここら辺の言葉が分かる中国人はハイレベルの通訳です。少なくとも私が出会った中では半分以上は知らない通訳だったと思います。

<カタカナ用語、擬音語>
タクシーとかそういうのは問題ありませんが、最近のビジネスでよく使う「エビデンス」「リスケ」とかは結構厳しい。「ベター」「ハイになる」も場合により通じないことがあります。あと擬音語は避けた方が無難です。「もたもたするな」「目がバキバキ」「コツコツ頑張る」などです。でもこの辺りは前後関係で推測できることが多いので大事に至ることも少ないですが。

<業界用語、専門用語>
同じ会社で長く携わっている場合は問題ありませんが、臨時で通訳してもらう時に業界違いの方が通訳する場合は注意が必要です。日本でも起こりうる話ですが、当然ながら専門の言葉は通訳といえども知らないことが多いです。言われれば当然なのですが、通訳してもらう時にうっかりそのことを忘れてしまうことがあります。

通訳に伝わりやすい日本語の使い方

簡単に言ってしまえば、小学生に対して話すように心がけることです。平易な日本語でなるべく簡単に言います。ビジネスの場なのでつい難しく言いたくなってしまいますが、伝わらなければ意味がありません。また、通訳の立場になってみれば色々と見えてきます。会議で通訳をしてもらうことが事前に分かっていれば、簡単な内容を先に伝えておくことも効果的です。

基本的には、上記で書いた理解しにくいことの逆をつけばいいです。YESとNOをはっきり意思表示するだけでもスムーズにいきます。なるべくゆっくり分かりやすく話して、分かっていなさそうな雰囲気があるようなら、別の言い方に変えてみることもオススメです。同じフレーズを繰り返しても、通訳は聞き取れないのではなくて、理解できていないことが多いので、違う角度からの言い方をすると納得した顔をすることがあります。

あとは文章を書くように、主語・述語・目的語を明確にして言うことですね。日本語は主語や述語を省略しがちですが、「誰が」「何を」などは重要な情報です。面倒なようですが、きちんと情報を提示することが必要です。会議室などで筆記が出来るような環境であれば、文字を書きながら伝えるのも効果的です。とにかく相手はロボットではないので配慮をしてあげることが肝心ですね。

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